後輩くんは溺愛を隠せない
私は、寝たフリをして返事をしなかった。
「......」
夏樹くんは、それ以降何も言葉を発さないまま時間だけが過ぎた。
それが、5分だったのか10分以上だったのか、あるいは1分くらいだったのかーー、意識しすぎてドキドキしまくっている私には、時間の感覚が分からなかった。
突然、夏樹くんが身体を起こしたのを感じる。
どこか行くのかなーー、そう思っていたら私の向いている方に片手を置き、覆い被さるかのような体制になった。
これは、ーー予想外だ。
突然の事でどうすることも出来ず、私はひたすら寝たフリを続ける。
どうなっちゃうの、まさか、このまま抱きしめられちゃう?なんて考えていると、夏樹くんの息が私の右耳にかかった。
「寝顔も可愛すぎるっ!」
寝顔を見られただけらしい。
小声で興奮している夏樹くんは、いつも通りだ。
だけど、それを言われる私はいつも通りではない。
「......おやすみなさいーーチュッ」
挨拶の後、軽いリップ音を立てて夏樹くんは離れた。