後輩くんは溺愛を隠せない
「大丈夫、すぐ終わるから。もし来ちゃったら何か話して場を繋いでおいて」
「......わかりました」
よろしくねと伝えて、私は印刷ボタンを押してから、コピー機に行く。
オフィスの端にあるので、私のデスクからは少し遠い。
仕事をしている人達の合間を縫って行くと、途中でクスクス笑い声がした。
そちらを見てみると、女の先輩たちが、4人で固まって私を見ながらコソコソ話している。
ーーまたか。正直、それしか思えなかった。
出張から帰ってきて、すでに何回か物がなくなっていた事がある。
どれも、今回みたいにデータの残っているものだから良かったけれど、二度手間になるからやめて欲しい。
「はぁ......」
私は溜息をつきながら、コピーされた用紙を確認した。
漏れがないことを確認して、自分のデスクに戻る。
「紗知先輩、最近元気ないですけど、どうしたんですか?」
さすが、夏樹くん。鋭い。
「なんでもないよ」