後輩くんは溺愛を隠せない
暗い顔しちゃってたのだろうか......、でも、夏樹くんに言うつもりは無い。
それに、原因は聞かなくても分かってる。
エスカレートする前にどうにかしないとなぁと思いながらも、私はタイミングよく来店したお客様に視線を向けた。
「ほら、夏樹くん行くよ?」
「......わかりました」
夏樹くんは、探るような目で見てきたけれど、誤魔化せたみたいだ。
ーーそれからは、話す暇もないほど忙しくなり、仕事に集中した。
***
それから、数日後のお昼休み。
私はお昼の飲み物を忘れた為、社内の休憩所に足を運んだ。
休憩所と言っても、自動販売機が2台ならんでいて、ベンチが置いてある小さな所だ。
そこに向かうため、廊下を歩いていると女の人の話し声が聞こえてきた。
「柏木さん、最近ホント調子乗ってると思わない?」
ーー私の話......?
聞き覚えのある声に、歩く速度を緩め、息を殺す。
「分かる。黒瀬くんと泊まりで出張に行けたからって、勘違いしないで欲しいわ」