後輩くんは溺愛を隠せない
美味しそうだけど、ちょっと待って、自分で取れるから!そう言いかけて開いた口に、卵焼きが放り込まれた。
「どうですか?」
輝く笑顔の夏樹くんーー。
しょっぱ過ぎないだし巻きで、美味しい。
だけど、何もこんな人前で食べさせてもらうなんて、頭から湯気が出そうなほど顔が熱い。
「お、お、美味しいけど......ばかぁ」
恥ずかしすぎて、穴に入りたい。
春奈や胡桃はもちろん、近くのデスクの人達には見られていたらしく、ニヤニヤと意味ありげな視線を送ってくる。
「こんなに可愛い紗知先輩が見れるなんてっ!!紗知先輩の卵焼きは、甘くて美味しかったです」
卵焼き以上に甘くなった、周りの視線から逃れたくて、私は立ち上がった。
「と、トイレ言ってくる」
1度も振り返らずに、バタバタと逃げるようにその場を離れた。
扉を出てすぐのトイレに駆け込む。個室に入り、パタンと扉を閉めたところで、私の心の叫びが爆発した。