後輩くんは溺愛を隠せない
「夏樹くん、私のUSB持ってる?」
「持ってないですよ?どうしたんですか?」
「資料入れてたやつがなくて......、またやるからと思ってつけっぱなしにしていたんだけど」
夏樹くんなら、一言言ってから借りるだろうし、なんでないんだろう......。
あれがないと、作業が進まない。
これから必要なデータが全て入っているのだ。
「ちなみに、夏樹くんはお昼休みずっとここにいた?」
「はい。......あ、でも紗知先輩が出たあと、俺も少しだけトイレ行きました」
もしかして、その間に取られたーー?
一応、その辺に落ちていないかと探してみるけれど、見つからなかった。
「ちょっと、探してくるね」
予約の時間までは、少し余裕がある。
「分かりました。俺も探してみます」
「ありがとう」
私は、今日朝から行ったところを確認する。
もしかしたら、どこかに置いてきてしまったのかもしれない。
ーー資料室に、応接室、休憩所まで見たけれど、どこにもなかった。