後輩くんは溺愛を隠せない
スーツのジャケットを脱いで、震えている私に掛けてくれる。
夏樹くんの匂いに包まれて、私は安心することが出来た。張り詰めていた糸が解けていく。
「大丈夫......、来てくれてありがとう!」
笑顔を作り出してそう言った。
なのに、夏樹くんは何故か複雑そうな顔をしている。
「俺の前では強がらないでください。無理して笑わないでいいんですよ?」
「強がってなんか......」
ないーー、そんな私の嘘を見破った夏樹くん。
「いいから、弱いところも見せてくださいよ」
そう言って、私を抱きしめた。
夏樹くんの体温に、私の冷えきった身体は緊張を解いていった。
「...っばか、来るの遅いーー」
堪えていた涙が零れ落ちた。
ストッパーが外れたかのように、ポロポロと溢れてくる。
「怖かったんだから......」
夏樹くんは、何も言わずに私の愚痴を聞いてくれた。
そして、優しく私の頭を撫でる大きな手は、いつの間にか私の震えを止めていた。