後輩くんは溺愛を隠せない
「紗知先輩?」
カタカタと震え始めた私に、夏樹くんは不思議そうな声を出す。
「ご、ごめ......雷が......」
「紗知先輩ーー、雷ダメなんですか?」
声も出せずに、その問いに頷いて返す。
「紗知先輩のこんな一面が見られるなんてっ......」
怖がっている私を抱きしめながら、なぜか感動している夏樹くん。
ーー夏樹くんは、どんな状況でも通常運転だった。
余裕のない私は、それに突っ込む事も、夏樹くんから離れることも出来ない。
必死にしがみつきながら落ち着くのを待った。
しばらくすると、雷の音も遠ざかる。
「あ、ありがとう」
音もしなくなり、もう大丈夫だろうと夏樹くんから離れる。
収まるまで、ずっとしがみついてしまった。
しかも、自分からなんて、恥ずかしくて顔が上げられない。
「あれ?もういいんですか?もっとくっ付いて居てもいいんですよ?」
夏樹くんは、私が離れたのが残念ーー、とでも言うように言った。