後輩くんは溺愛を隠せない
放置しすぎたのか、パッと見で分かるほど私の右足首は晴れていた。
自覚した途端、痛みが酷くなってくる。さすがに、忘れてたとは言いにくい。
「紗知先輩、文句言わないでくださいね」
何が?と思った時には、既に私の身体が浮いていた。
「えっ、ちょっと、夏樹くん?」
「暴れると落ちちゃいますよ、絶対落としませんけど」
私は何故か、お姫様抱っこされていた。
下ろしてもらおうと、身体を動かしても、ビクともしない。
「重いから、下ろして!」
「どこがですか。全然軽いので大丈夫です。それに、紗知先輩その足じゃ歩けないでしょ?」
そう言われるとそうなんだけどーー。
恥ずかしいものは恥ずかしい。
「いいから、捕まっててくださいね」
優しさとかっこ良さが、夏樹くんからにじみでている。
私はこの時、改めて夏樹くんが好きだと再確認ができた。
「夏樹くん......、ありがとう」
「紗知先輩の為なら、喜んで!」
カッコよかった雰囲気が一点して、いつもの夏樹くんに戻る。
夏樹くんは、どこまで行っても夏樹くんのままだ。
私はそんな所が好きになったのだけれど、今はまだ、伝える勇気が無かった。