後輩くんは溺愛を隠せない
まさかの、3日後。
「俺に言われてもなぁ、とにかく、黒瀬は準備しとけよ。
柏木は、また1人に戻るから黒瀬にやらせていた分も整理しといてな。みんなには前の日の朝言うから」
部長は、言うことだけを言って、会議室を出ていった。
ーー夏樹くんが本社に行くって事は、今までの様に会えなくなってしまう。
私の片思いだけれど、そんなの仕事には関係がない。
それに、分かっていたことじゃないか。
胡桃から夏樹くんが来る日に聞いた噂でも、本社の偉い人の子供が来るって言っていた。
たまたま、研修でこの店舗に来ただけ。
そして、たまたま私が担当して、教えていただけなのだ。
上からの異動辞令に拒否出来るはずもない。
だけど、夏樹くんに行って欲しくないと言う気持ちと、仕事だから仕方ないという気持ちが私の中で戦っている。
「ーー先輩、紗知先輩?」
「え?」
呼ばれていたことに、気づかなかった。
夏樹くんが、放心状態になっていた私を覗き込んでいる。