後輩くんは溺愛を隠せない
「紗知先輩、俺は離れたく無いですけど、仕方ないので行ってきます」
「うん?」
私の両肩を持って、夏樹くんが熱弁しはじめた。
突然の事で、なんのことを言っているのか着いていけない。
「天使すぎるので、俺は誰にも渡したくないです。だから、変な人について行っちゃダメですよ?他の男になびかないでくださいね?」
「わかった?」
夏樹くんは何を言ってるのだろう?
いくら私でも、変な人について行かないし、他の人になびく予定なんかない。
夏樹くんが私になびいて欲しいくらいだ。
ただ、このタイミングで気持ちを伝えても、これから離れ離れになるのだから、上手くいかないに決まっている。
「はぁ......、紗知先輩は、仕事の事とか、他の人のことは鋭いのに、自分の事は鈍感なんだから」
「うーんと......?」
「とにかく、俺は向こうで頑張るんで、紗知先輩もこっちで頑張ってくださいね!」
それは、私のセリフだ。
送り出される人に言われることじゃない。