後輩くんは溺愛を隠せない
いつもは、ここまで入らないから、カウンター席がある事を知らなかった。
「こんな席もあったんですね~」
他のお客さんもまだ居ないらしく、貸切状態だ。
「今日はお客さんも少ないから、俺が話聞いてあげられるよ~」
瀬田さんは、そう言ってカウンターの中に入っていった。
まさか、話し相手になってくれるとは思っていなかった。
ひとりで飲むのも寂しいので、瀬田さんのその提案は正直ありがたい。
「さぁ、座って?何飲む?」
私は進められるままに、真ん中の席に座る。
少し高い椅子は、よくBARなどであるようなオシャレなものだ。
瀬田さんの後ろの棚には色々なお酒が並んでいた私は、オシャレな店なんて普段行かないので、興味津々でその棚を見てしまう。
「ははっ、さっちゃんは可愛いなぁ」
「なっ!?そんなこと!」
からかうように言われて、不覚にもドキッとしてしまった。
夏樹くんが居なくなってから、そういう冗談を言ってくる人なんて居ないので、久しぶりの感覚に戸惑いを覚える。