後輩くんは溺愛を隠せない
飲みかけたグラスを置いて、いつの間にか出されていたおつまみを摘む。
「それで、さっちゃん、今日はどうしたの?」
ひと段落ついたところで、瀬田さんに言われた。
ーー鋭い。
まあ、1人で飲みに来るなんて、なんかあったとしか思わないよね。
「特に何かあったわけじゃないんですけど、ちょっと寂しさを紛らわせようと思いまして......」
「なに、さっちゃん寂しいことがあったの?」
瀬田さんは、夏樹くんが異動したことはまだ知らないから、そういうのも無理無かった。
「はい、夏樹くん......いや、あのいつも一緒に来ていた男の人が異動になっちゃって」
「男の人って、あのイケメンの?」
「そうです」
そういえば、飲みに来た時、夏樹くんと瀬田さんが話しているのは見たこと無かった気がする。
名前言われても分かんないよね。
「ふーん......」
瀬田さんは、なにかを考えるようにしながら意味ありげな声を出した。
「さっちゃんは、あの人が好きなんだ?」