後輩くんは溺愛を隠せない


飲みかけたグラスを置いて、いつの間にか出されていたおつまみを摘む。



「それで、さっちゃん、今日はどうしたの?」



ひと段落ついたところで、瀬田さんに言われた。


ーー鋭い。


まあ、1人で飲みに来るなんて、なんかあったとしか思わないよね。



「特に何かあったわけじゃないんですけど、ちょっと寂しさを紛らわせようと思いまして......」


「なに、さっちゃん寂しいことがあったの?」



瀬田さんは、夏樹くんが異動したことはまだ知らないから、そういうのも無理無かった。



「はい、夏樹くん......いや、あのいつも一緒に来ていた男の人が異動になっちゃって」


「男の人って、あのイケメンの?」


「そうです」



そういえば、飲みに来た時、夏樹くんと瀬田さんが話しているのは見たこと無かった気がする。


名前言われても分かんないよね。



「ふーん......」



瀬田さんは、なにかを考えるようにしながら意味ありげな声を出した。



「さっちゃんは、あの人が好きなんだ?」


< 188 / 214 >

この作品をシェア

pagetop