後輩くんは溺愛を隠せない
「ふぁぁぁ......」
私、柏木 紗知(かしわぎ さち)の朝は、眠たい目を擦りながら大きなあくびと共に始まる。
眠気の冷めないまま、ベットから出て顔を洗いに行くのはいつもの事。
そしてーードンッ......。
「痛ったぁ......」
ドアの角に足をぶつけた。
これはいつもはやらない......。
「今日は良くないことが起こりそう......」
痛みで涙目になる。
朝から気分は憂鬱だ。
だけど、この痛みのおかげで目が覚めた。
冷たい水で顔を洗い、メイクをして、温めておいたコテで、モカブラウン色の髪を整える。
ちなみに、背中の真ん中くらいまである髪は元から癖っ毛で、軽く巻くだけでもちょうどいいウェーブになる。
「よし!」
時計を見ると7時30分。
家を出るのにちょうどいい時間だ。
「行ってきまーす」
誰も居ない部屋に、声をかけて家を出た。
徒歩5分の距離にある駅に向かい、そこから電車で15分。
駅前の通り沿いにある旅行代理店の小さな支店。そこが、私の職場。