後輩くんは溺愛を隠せない
途中で寄る所もあるので、時間的にはギリギリだった。
新幹線に乗るほどではないので、電車を乗り継いでいく。
お昼も食べてからだったので、電車に乗れたのは15時40分だった。
到着予定時間は17時と仕事の定時と同じ時間だ。
降りてから急がないと、先にあの男に、紗知先輩が取られてしまう。
1時間ちょっとの道のりが、今日は倍以上に長く感じた。
「次は~」
やっと、職場の最寄り駅の名前がアナウンスで流れた。
早くついて欲しいと思ったけれど、着いたら着いたで、心の準備が......と思ってしまうのだ。
電車が止まったのは、予定時刻ピッタリ。
つまり、17時なので、俺に迷っている時間は無かった。
よし、俺は急ぎ足で職場だった店舗に向かう。
ちょうど着いた時に、北見さんと斉藤さんが外に出てきたところだった。
「あれ?黒瀬くん?紗知と会わなかったの?」
着いてそうそう、挨拶もなしに、北見さんが焦ったように言った。
「今来たところで......」