後輩くんは溺愛を隠せない


まさか、春奈が夏樹くんに言っているとは思わなかった。



「ここでいいか」



そう言って、夏樹くんが止まったのは、人気のない公園だった。


こんな近くにあったんだと、今日初めて知る。


昼間は子供たちで賑やかになりそうだけれど、もう18時近い。


もう帰った後なのか、高校生が何組か居たけれど、小さい子などは居なかった。



「夏樹くん?」



突然止まった夏樹くんを不思議に思って、私も立ち止まる。


そして、最後に瀬田さんが言った言葉を思い出した。


“次はさっちゃんの番だよ”ってことは、今から告白しろって事?ーーいきなりすぎる。


そう自覚すると、ドキドキと鼓動が速くなり、落ち着かなくなってくる。



「紗知先輩、聞いて欲しいことがあるんです」



夏樹くんはそう言って、話し始めた。



***



まだ、入社する前の3月。


本当は違うところに就職しようと思っていた。



「夏樹、この資料を支店に届けてくれないか?」



社長をしている父さんに、お使いを頼まれた。

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