後輩くんは溺愛を隠せない
いつもなら面倒くさいと言って断るけれど、その日は他に行ける人が居ないらしく、どうしてもと頼まれてしまい引き受けることにした。
頼まれた行先は、電車で1時間位の所だ。
意外と遠い。気が進まないまま、俺はその支店に向かった。
スマホで道を調べながら、その店に向かい、中に入る。
「いらっしゃいませ」
俺が入ったことに気づいた1人が近寄ってきた。
それが、紗知先輩だ。
一目惚れだったと思う。
「どうされましたか?」
固まっている俺に、そう笑いかけてくれたその微笑みは、天使みたいだった。
「お客様?」
その声が、思考回路が飛んでいた俺を、現実に引き戻す。
「あ、すみません。これを持っていくように頼まれて......」
そう言って、持ってきた茶封筒を見せると、直ぐに何かわかったように案内してくれた。
「あ、本社の方ですね!ありがとうございます。こちらにどうぞ」
スタスタと迷いなく、会議室という所に案内された。