後輩くんは溺愛を隠せない


いつもなら面倒くさいと言って断るけれど、その日は他に行ける人が居ないらしく、どうしてもと頼まれてしまい引き受けることにした。


頼まれた行先は、電車で1時間位の所だ。


意外と遠い。気が進まないまま、俺はその支店に向かった。


スマホで道を調べながら、その店に向かい、中に入る。



「いらっしゃいませ」



俺が入ったことに気づいた1人が近寄ってきた。


それが、紗知先輩だ。


一目惚れだったと思う。



「どうされましたか?」



固まっている俺に、そう笑いかけてくれたその微笑みは、天使みたいだった。



「お客様?」



その声が、思考回路が飛んでいた俺を、現実に引き戻す。



「あ、すみません。これを持っていくように頼まれて......」



そう言って、持ってきた茶封筒を見せると、直ぐに何かわかったように案内してくれた。



「あ、本社の方ですね!ありがとうございます。こちらにどうぞ」



スタスタと迷いなく、会議室という所に案内された。

< 208 / 214 >

この作品をシェア

pagetop