後輩くんは溺愛を隠せない
「上の者を呼んでまいりますので、少々お待ちください」
その、一つ一つの動作に目が奪われる。
こんなに、素敵な人が居るんだ......。
ぼーっとしていると、音を立てて扉が開いた。
また、あの人が戻ってきてくれたのか?と思って顔を上げると、40代半ばの男の人が入ってきた。
あの人はもう来ないのかーー、そう残念に思ってしまう俺は、もう重症だろう。
「君が、社長のお子さん?話は聞いてるよ。持ってきてくれてありがとうね」
物腰の柔らかい声が、男の人から出てくる。
父さんから、俺が来ることは伝わっていたらしい。
「あ、いえ」
俺はさっきの人が気になり、愛想のない返事をしてしまう。
そんなことは気にならないのか、男の人は受け取った茶封筒の中身を確認していた。
「あの......」
「ん?どうしたの?」
途中で顔を上げて、俺の声に耳を傾けてくれる。
「さっき案内してくれた方って......」