後輩くんは溺愛を隠せない
「俺も行って良いですか?」
「それはーー」
「いいよ!行こう。黒瀬くんの歓迎会も兼ねて行こう!」
「......っ」
断ろうと思ったのに、春奈が承諾する方が早かった。
「ありがとうございます!」
さらに嬉しそうになった夏樹くんに、やっぱり来ないでとは口に出来なかった。
ーー夏樹くんが来るなら、愚痴が言えないじゃないか......。
それから、先に3人を送り出して、残りの仕事を片づける。
とりあえず、簡単なものからーー。
来週の予約のお客様の資料をある程度準備して、いくつか夏樹くん用に分けておく。
30分ほど、いつもの数倍のスピードで作業をして、準備を終わらせた。
「お疲れ様でーす」
「柏木が残業なんて珍しいな?」
棒読みで、お決まりの挨拶をして帰ろうとしたのに、少し笑っている部長に呼び止められる。
「部長......わかってて言ってます?」
「あぁ、わかってて言ってる」
突然、なんの準備もなしに私を指導係に指名したこの人は確信犯だ。