後輩くんは溺愛を隠せない
そんなこと聞かないでっ!と思っていたのにーー。
「いえいえ、紗知先輩の事少しでも知りたいので、嬉しいです!」
「うっ......」
即答されると、返事に詰まる。
そんな、くだらないことを話しているうちにも、夏樹くんの前には、空のジョッキが増えていく。
途中で、私も追加したけれど、まだ2杯目だ。
「そう言えばさ、沙知はどうして黒瀬くんのこと“夏樹くん”って呼んでるの?
大体、初対面の人には、苗字のさん付けだったよね?」
会話にひと段落着いた春奈が、今度は私をターゲットにしてきた。
「そ、それはーー夏樹くんが......」
「ふーん?」
私が慌てて言うと、春奈は意味ありげな顔で探りを入れてくる。
「北見さん、北見さん。俺がそう呼んでほしくて言ったんですよ!」
「うんうん、でもなんで?」
助け舟を出してくれた夏樹くんは、お酒のおかげか、テンションが高い。
そんな夏樹くんに、胡桃と春奈も興味津々だ。