後輩くんは溺愛を隠せない
でも、酔いが回っている私の口は止まることを知らない。
「指導なんか......向いてないのに......っどうせ、私なんか......」
「ーー紗知先輩は、俺の指導するの嫌ですか?」
「嫌じゃないけど、嫌なの......!指導は出来ないの!」
少し悲しそうな夏樹くんの顔が見えたけど、私には気にする余裕なんてなかった。
私だって、指導したことがない訳では無い。
1年半くらい前ーー、担当を付けて仕事するのを終えて、独り立ちしたばかりの後輩と一緒に企画を作る事になった。
初めは張り切っていたのに、だんだん噛み合わなくなってきたのだ。
「ねぇ、これもっと調べてもらえる?他にもあるはずだから」
「じゃあ、柏木さんが自分でやったら良いじゃないですか!」
その話題になった資料は、既に3回調べ直しをしている。
他にもいい条件が沢山あるのを私は知っているけれど、全部わたしがやってしまうとその人のためにならないと思って、見つけられるまで任せようとしていた。