後輩くんは溺愛を隠せない
「紗知先輩......?」
昔を思い出していた私を、夏樹くんが現実に引き戻す。
私に後輩指導は向いていない。
夏樹くんは、いい子だし学ぶ姿勢もあった。
今日1日やっただけで色んなことによく気づくけれど、すぐ嫌になってしまうに決まっている。
「どうせーー、みんな居なくなるんだから......」
だったら、私なんかの下につかない方がいい。
そう思っても、もう決まってしまったことはどうにも出来ない......。
私は半分以上入っているカクテルを、グイッと一気に傾けて、飲み干した。
私が飲み終わったグラスを勢いよく机に置いた事で、春奈が私の前にある空のグラスを見た。
状況に気づいたらしい春奈は、焦ったように止めようとして、間に合わなかったーー。
「あっ、沙知!もぅ......知らないわよ」
その声を最後に、私は重くなる瞼に逆らえず、目を閉じた。