後輩くんは溺愛を隠せない
紗知先輩をさっちゃんと呼ぶその声を聞き、俺は眉間にシワが寄る。
馴れ馴れしいーー。
思いっきり顔に出てしまった。
「ははっ、そんな怖い顔しなくても......、俺この店で働いてる瀬田遥斗です。
さっちゃんはよく来てくれてるから仲良くなっただけだよ」
そう言われても、信用出来るはずがない。
あだ名で呼ぶような関係だ。
年上の余裕なオーラも出しているこの男に、俺はムカついていた。
「帰るんで、いいですか?」
いつもより、数段低い声が出る。
そのまま通り過ぎようとした時、聞き捨てならない言葉が聞こえた。
「仕事なければ俺が送っていくのに」
は?そんなのさせるわけがない。
俺は敵意むき出しのまま瀬田という男を睨みつける。
きっと、この男も紗知先輩のことが好きなのだろう。
もちろん、譲るつもりは無いけれどーー。
「じゃ、失礼します」
紗知先輩が寝ているのに、ここで言い争う訳にも行かないので、俺は横をすり抜けて外に出た。