後輩くんは溺愛を隠せない
夜の冷たい風が、ワイシャツの中を通り抜ける。
紗知先輩も寒かったのか、俺の腕の中でぎゅっと縮こまった気がした。
無意識なのか、俺の胸に擦り寄ってくる紗知先輩。
自然と胸の鼓動が速くなる。
さっきの出来事は忘れて、怒りなど一瞬で消え去った。
「......っ!」
ほんとにーー、可愛すぎる......!
本人が寝ていて無意識なのが、タチ悪い。
でも俺は、この収まる気配のないドキドキを、紗知先輩に聞かれなくて良かったことにホッとしていた。
これ以上、そとにいるのは寒くなりそうなので、直ぐにタクシーを捕まえる。
抱えたまま乗り込むわけにもいかず、紗知先輩を先に椅子に座らせて、俺は反対側から乗り込んだ。
そういえば、紗知先輩の家知らないや......北見さんに聞こうにも、聞く前に帰っちゃったしーー。
「紗知先輩?」
「......スゥー......」
一応呼びかけてみるも、気持ちよさそうな寝息しか聞こえない。
しょうがない、かぁ......。