後輩くんは溺愛を隠せない


俺は運転手さんに、自分の家の住所を伝えた。


シーンとした車内で、俺は左隣に座っている紗知先輩を見る。


だんだんと窓の方に身体が傾いていく。


寝顔、やっぱり可愛い......。


自然と笑みが漏れた。



「ーーおっと......」



ガタンっと少し揺れたところで、紗知先輩の身体が一気に傾く。


窓にぶつかる前に、俺は自分の方へ引き寄せた。


俺の肩に頭を預ける形になった紗知先輩。



「う......ん......」



起こしちゃった?


そーっと覗き込んでみると、どうやら寝息だったらしい。



「ふぅ......」



良かった......と安堵の息を漏らす。



「彼女さん、可愛いですね」



そんな俺の様子をバックミラー越しに見ていたらしい運転手さん。


“彼女さん”そう言われたことに、嬉しくなる。


まだ彼女ではないけれど、俺は否定しない。



「はい、もう手放せないです」



もちろん、手放すつもりなんて全くない。


タクシーに乗ってから15分ほど経った所で、家の前に着いた。

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