後輩くんは溺愛を隠せない



「お待たせしましたっ!!」



外に出た時には、30分以上経っていた。



「全然待ってませんよ。ーー紗知先輩、可愛すぎます......っ!」


「お世辞でも嬉しいよ、ありがとう」



適当にあった服を着ただけだ。


特別お洒落した訳でもない。



「お世辞じゃないんだけど......」



そう呟いた夏樹くんの声は小さくて、よく聞き取れなかった。



「えっ?」


「いえ!なんでもないです。紗知先輩、どこ行きましょうか?」



聞き返しても、教えてくれることは無かった。


とりあえず、どこに行くにも電車に乗らないと行けないので駅に向かって歩き始める。


というよりも、行きたいところあるから誘ったわけじゃなかったのね。



「行きたいところあったから、誘ったんじゃなかったの?」


「紗知先輩と行けるなら、どこでもいいです!」


「......あ、そう」



行きたいところがないから、出かけるのを辞めるというのは夏樹くんの選択肢には無いらしい。

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