後輩くんは溺愛を隠せない
ーーやっぱり、似合わないか。
そう思って着替えようとカーテンを閉めようとした時、我に返ったように2人が動き出した。
とは言っても、夏樹くんは何故か顔を真っ赤にして口をパクパクさせているだけで言葉になっていないのだけれどーー。
「......っ!」
「っ!凄くお似合いです!お客様!」
夏樹くんの横で店員さんが、絶賛してくれている。
でも、店員さんは誰にでもそう言うからなぁ。
「お世辞でもありがとうございます」
「そんな、お世辞なんかじゃないですよ!ほかの服も着て見せて頂けますか?」
店員さんから、着て見せてと言われるのは初めてだ。
まず、普通なら試着室に案内するだけで、後はどこかに行っちゃうのに。
「わ、分かりました......」
私は着替えるために今度こそカーテンを閉めた。
閉める直前、夏樹くんをちらっと見たけれど、まだ固まっていた。
それから、ほかの服も着てはカーテンを開けて、2人に見せるのを繰り返した。