後輩くんは溺愛を隠せない


私に聞こえていると思っていないのか、絶賛する2人の声に、私は出るに出れなくなってしまった。


夏樹くんに可愛いと言われて、私の心臓の鼓動は速まっていく。


それに、店員さんが言った“彼女さん”という事を、否定しなかった夏樹くん。


ただの後輩のはずなのに、私は自分でも制御出来ないくらいドキドキしていた。


必死に落ち着かせようと、深呼吸を繰り返す。


いつの間にか、外に居る二人の会話は収まっていて、気がついたら時間が経っていた。



「紗知先輩?」


「っひゃい!」



心配になったのか、突然声をかけられた私はびっくりして飛び上がる。



「着られました?」



あ、最後のこのワンピまだ見せてなかったね。


その事を思い出し、私は恐る恐る、カーテンを開けた。


ーーハッと息を飲むような声が聞こえる。


次の瞬間、私の視界は真っ暗になっていた。



「っ......可愛い!紗知先輩は、やっぱり天使だ!」



原因は、今そう言った夏樹くんに抱きしめられていたから。

< 68 / 214 >

この作品をシェア

pagetop