後輩くんは溺愛を隠せない
なにか分かっているような、見透かされたような目で見られているけれど、私はその視線から逃げるように早足で戻った。
「あ!紗知先輩、良かった。もうすぐ橋本様が来ますよ!」
「わ、分かってるわよ。......よし!」
戻ってすぐに、夏樹くんに話しかけられたので、一瞬ドキッとする。
だけど、私は自分に気合を入れて何事も無かったかのように準備を始めた。
「夏樹くん、資料は?」
「ここにあります」
「ありがとう。あと、お茶の準備お願いね」
「分かりました」
うん。我ながら普通だったと思う。
そして、順調に準備も終わった頃、橋本様が来店された。
「「いらっしゃいませ」」
「橋本様、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
手の空いているスタッフで出迎えたあと、私は空いている席へ案内した。
佐藤様の時と同じように、夏樹くんを紹介し、同席の許可をとる。
橋本様は、ちょうどここ一週間は来ていなかったから、夏樹くんと会うのは初めてだった。