後輩くんは溺愛を隠せない
ただでさえ、やりたくない教育係......。
その上、新入社員がイケメンという事もあり、女性社員からの妬みもあるだろうーー私はやって行けるのだろうか。
不安になる気持ちをしまい込み、朝礼が終わった後、私は黒瀬くんを呼んだ。
「柏木紗知です。黒瀬くん、あなたの教育係になったのでよろしくね」
そう言って、微笑んでみせる。
営業スマイルはいつでも平常運転だ。
「......っは!天使だ......!!」
「......は?」
全く想像していなかった事を言われ、思わず素が出てしまった。
「あっ......、失礼しました。黒瀬夏樹です。よろしくお願いします、紗知先輩!」
何事も無かったかのように、そう言った黒瀬くんは満面の笑みで私を見ている。
苗字ではなく、いきなり名前で呼ばれて戸惑うけれど、悪い感じはしなかった。
さっきのは聞き間違い?ーーとりあえず、時間もないので突っ込むのは辞めておこう。
教育係だからと言って、今日の予約数が変わる訳では無い。