後輩くんは溺愛を隠せない


他愛のない話をして、家に着いたらすぐ別れるんだけどーー。


冗談だと思っていた話だったので、はじめは断ろうとしたのに、断りきれなかったのだ。



「それこそ危ないじゃないですか!待ってます!」


「待たせるのは悪いから......ね?」


「......ダメです!」



夏樹くんは1歩も譲る気配がない。


春奈と話すのも、どのくらい時間がかかるか分からないしーー、だからといって、夏樹くんの指導方法を話すのに、本人を目の前にしては言い難いから、一緒に行っていいとは言えない。


待たせるのも悪いし......。



「じゃ、じゃあ、帰る時電話するから!」


「......」


「だめ......?」



何とか、先に帰らせる方法はないかと、そう言ってみた。


良いと言ってほしい。


これじゃ、どっちが先輩なんだかーー。


私が先輩のはずなのに、決定権はなぜか夏樹くんが持っている。


そして、夏樹くんは少し考え込むようにしてから、口を開いた。

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