後輩くんは溺愛を隠せない


そんなこと言われたって、家まで5分しかかからない。


人通りの少ない、薄暗い道でも5分くらいなら余裕だ。



「大丈夫だよ。そんなに心配しなくても、今までも1人で帰ってたんだし」


『でも、紗知先輩、可愛いから......。後付けられたりしてないですか?』



全く、なんの心配をしてるんだ。


私なんかの後付ける物好きなんて、居ないでしょ......。



「そんな人居るわけないでしょ?大丈夫だよ」


『紗知先輩は誰から見ても可愛いんですからね?』



念を押すように夏樹くんに言われた。



「お世辞ありがとう~」


『お世辞じゃないです!本気ですよ?』


「きっと、そう言ってくれるのは夏樹くんだけだよ」



可愛いなんて、夏樹くんからしか言われないし、思ってるのもきっと、夏樹くんだけだーー。



『はぁ......紗知先輩は鈍感だから、これからは俺が気づかせてあげます!』


「私は別に......鈍感じゃない!」



鈍感なつもりは無い。


むしろ、自分ではしっかりしている方だと思っている。

< 89 / 214 >

この作品をシェア

pagetop