後輩くんは溺愛を隠せない
「黒瀬くーー」
「夏樹って呼んでください!」
私の言葉を遮って、食い気味に言ってきた。
「夏樹くん......」
その勢いに押されたように、口から言葉が出た。
普段なら、仲良くもなっていないのに名前でなんて呼ばないけれど、まるで犬がご主人様にしっぽを振っているかのような、嬉しそうな顔で言われて、私に無視できるはずが無かった。
「とりあえず、今日は私の仕事を見て流れ覚えて」
「はい!」
返事はよろしい......。
今日はさすがに予約数が多く、1つずつ教えている余裕がなさそうなので、見てもらうことにする。時間が空いた時に、少しずつ教えていこうーー。
やる気があるのか、私が考えている時も夏樹くんは、これから始まる仕事に目をキラキラと輝かせていた。
「まず、お客様が来店したら、席にご案内。そのまま話を進めるから、あとから着いてきて」
「はい!紗知先輩の仕事見て覚えます!」
「......」
大丈夫かな......。