後輩くんは溺愛を隠せない
【夏樹side】


うーんーー。


俺は今、自分でまとめた書類を目の前に難しい顔をしている。期限までは後2日。


紗知先輩に、田中様の資料をまとめてみてと言われた時は、すごく嬉しかった。


だけどーー。



「なんか、物足りない感じがするんだよなぁ......」



既に資料は完成しているけれど、納得いかないので、まだ提出はしていない。


それに、紗知先輩に言われたことが気になっている。


“田中様は、初めてのお客様じゃ無いからね。“
それはもう知っていた。


だから、今まで行ったことのある所は候補から外してある。


それなのに、紗知先輩がそう言ったのはなにか意味があるはずーー。



「あ、斉藤さん。少しいいですか?」


「黒瀬くん?どうしました?」



書類に向かって唸っている時、ちょうど斉藤さんが通りかかった。



「これなんですけど......どう思いますか?」


「どれどれ~?」



俺は資料の束を北見さんに見せる。

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