後輩くんは溺愛を隠せない
「ーー大丈夫」
紗知先輩はもう一度そう言ったけれど、恥ずかしいのか顔が紅くなっている。
可愛い......。
こんな時に、俺は何を考えているんだ。
頭の中から振り払おうと思っていても、距離の近い今は余計に考えてしまう。
ーー心臓の音バレてないよね......。
顔は必死に何事も無いように見せているけれど、内心バクバクだ。
好きな人とくっついていて、平常心を保っていることなんてさすがに出来ない。
こんな状態じゃ話なんか出来ないし、周りの迷惑になってしまう。
俺は、ドキドキが収まらないまま、早く電車が空きますように......そう願うしかない。
この状態で居たい気持ちもあるけれど、このままだと紗知先輩をもっと欲しくなってしまう。
早く俺のものになって欲しい、そう想いながらも、焦って紗知先輩と気まずくなりたくはないので、ここで暴走するわけには行かない。
なのに......紗知先輩の最寄り駅まで満員状態が収まることはなかった。