後輩くんは溺愛を隠せない
「えー次は~」
やっと着いた。
15分の長い道のりを揺られて、やっとの想いで駅に着いた。
これ以上は我慢できそうになかったから助かった。
俺たちは、人の流れに乗って改札を通る。
「な、夏樹くん!」
「はい?」
人通りも少なくなったところで、後ろを歩いていた紗知先輩にスーツの袖を引っ張られて振り返る。
「えっと、そのーー、電車で守ってくれてありがとう......」
俯きがちで、恥ずかしそうに言った紗知先輩。
可愛いすぎるんだけど。
せっかく人が必死で我慢していたのに、紗知先輩は平気でその壁を崩してくる。
今すぐ抱きしめたい!キスしたい!
「紗知先輩、それはわざとですか......?」
気持ちを必死に抑えながら聞く。
わざとなら今すぐ抱きしめてしまおう。
「えっ?なにが?」
紗知先輩に限ってわざとなはずが無かった。
分かっていた、わかっていたけどーー。
「可愛すぎて困るので、これだけさせてください」
俺は紗知先輩の手をとり、ぎゅっと繋ぐ。