後輩くんは溺愛を隠せない
人通りが少ないとはいえ、何人かは通っている。
外で紗知先輩に抱きつくなんて、絶対嫌われてしまう。
それに、付き合えてないのに、キスなんて出来るはずがない!だから、手を繋ぐことで気持ちを抑えた。
「えっ、ちょっ、夏樹くん!?」
「はぐれたら困るので......」
家に帰るまでの道で、人混みでも無いところではぐれることなんてないけれど、俺はそう言って手を引いて歩いた。
紗知先輩の小さくて柔らかい手。
普段なら他愛のない話をするのだけれど、初めてのことに意識しすぎて、無言のまま歩いていた。
紗知先輩は振りほどくことなく、手を繋いでくれている。
俺の気持ちは伝えているけれど、きっと紗知先輩には伝わってない。
でも、振りほどかれないって事は、少しは期待してもいいよね......?紗知先輩の手の温もりが直に伝わってくる。
「お、送ってくれてありがとう」
気が付くと家の前に着いていて、耳まで真っ赤になった紗知先輩に言われた。