婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
病院で診察を受けて三日後。朝から強い吐き気に襲われて目が覚めた。
まだ隣で寝ている新さんを起こさないように、そっと静かにベッドを抜け出す。
立つとめまいも起き、足を何度も止めて壁を伝いながらリビングまで移動する。なにも口にしたくはない気分の中なんとか少量の白湯を飲み下した。
困ったな。辛くて立っていられない。
倒れ込むようにソファに横になったが、込み上げる吐き気は変わらず。
次第にむかむかした嫌悪感が胸いっぱいに広がりトイレへと駆け込んだ。
せっかく頑張ってとった水分が外へ出てしまったのと、お洒落に仕上げられ、毎日綺麗に磨き上げているトイレで嘔吐したショックでしばらく呆然とした。
急にこんなに酷くなるものなの?
吐いた際に、頬に筋となって流れた涙も一緒に洗面所で顔を洗い流す。口の中が不快だったので歯磨きをしたが、ここでもまた胃の中のものがせり上がってきて苦しくなった。
インターネットでつわりについて調べ、右側を下にした方が楽になると書かれていたのでソファでそのようにする。
いっそ寝てしまえば楽になるのに、目をつぶったところでどうしても意識は胃のむかつきに向いて眠れない。
永遠に続くような時間が過ぎ、ようやくいつも朝食を準備する時間になった。
重い身体を引きずるように動かして支度をする。