婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 女性の澄んだ声が耳に残る中、ボサボサな髪を綺麗にひとまとめにして、目元と口元に簡単な化粧を施す。

 ベースメイクだけはしておいてよかった。

 身に着けているアイボリーのシャツワンピースは決してお洒落とは言えないけれど、着替えるまでもないと思い急いで玄関の扉を開けた。

 そこに待ち構えていた女性は想像していたより背が高く、すらっとしたモデル体型にまず目がいった。

 履いている黒色の高いヒールを抜きにしても百七十センチ近いのではないだろうか。

 白のニットカーディガンに、薄紫色のレース生地の膝丈タイトスカート姿は、彼女の綺麗な身体のラインを強調させている。

 子供っぽい私とは正反対で大人の女性といった感じだ。

「お待たせして申し訳ございません。妻の茉莉子と申します」

 ぎこちない笑顔を浮かべて挨拶をする。

「お忙しいところ恐れ入ります」

 丁寧にお辞儀をした女性の胸まであるはちみつ色の髪が揺れる。
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