婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
秘めた想い


 白石さんと対峙してから一週間近くが経過して、妊娠週数はおおよそ八週目にさしかかった。つわりの症状は日を追うごとに悪くなるばかり。

 新さんの食事は鍋ひとつでできる煮物など簡単なものになっていき、掃除は目につく場所を片付けるくらいしかできなくなっていた。

 特に体調が悪くなるのは夕方から夜中にかけてで、できる限り隠そうと思っていたのに、トイレで嘔吐しているのはすぐに気づかれてしまった。

「汚いところをお見せしてすみません」

 身なりに気を使う余裕もなく、髪もボサボサで肌も日を追うごとにカサカサになってきた。

 新さんの前ではみすぼらしい姿を見せないよう心掛けていたのに、もうそんな余裕はない。

 引かれていないだろうかという私の心配をよそに、新さんの態度は妊娠発覚以降さらに柔和になっている。

 その優しさの裏に、なにかやましいことがあるからかもしれないと勘ぐってしまう嫌な自分がいてひどく落ち込んだりもする。
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