婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「かなり辛そうだな。つわりの時期だけでもハウスキーパーを雇うか」

 ありがたい提案を断る理由はさすがになかった。頑張ったところで限界はある。それに私が動けないしわ寄せは新さんに降りかかるのだ。

 ハウスキーパーを雇えたらとても楽になる。しかし先日の白石さんとのやり取りが脳裏をかすめ、嫌な妄想が膨らむ。

 ハウスキーパーの人が若くて綺麗な女性だったらどうしよう。新さんがその人を気に入った
ら?

 ありもしない不安に駆られて心がざわついて落ち着かない。

「一度母に相談してもいいですか? もしかしたら通ってもらえるかもしれません。あっ、でも、新さんが気を使ってしまいますよね……」

「お義母さんなら大丈夫だ。知らない人間が出入りすると茉莉子のストレスになるだろうし、お願いできるならそれに越したことはない」

「ありがとうございます。それなら今日早速確認を取ってみますね」

 病院に行ったらすぐにでも報告しようと思っていたのに、自身の体調の変化についていけなくて心にゆとりがなく、なかなか電話ができずにいた。

 新さんを見送ってからお母さんに連絡をすると、昼前にはマンションへ駆けつけてくれた。
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