婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「ホルモンバランスが乱れるから情緒不安定にもなるのよ。泣き虫になったっておかしくないんだから」

 鼻をすすりながら「うん」とだけ返事をする。お母さんは私に数枚のティッシュを手渡すと、意気揚々と家事に取りかかった。

 その間も私は嘔吐が止まらなくて何度もトイレに駆け込む。時間が経過すればするほどせり上がってくる頻度も増え、体力がどんどん奪われていく。

 何度か間に合わなくなりそうな時があったし、ずっとトイレにいようかな。トイレとソファを何度も行き来するのも億劫だし。

 さすがにトイレの中にいたらお母さんが用を足せないので、廊下に出て扉のそばの壁にもたれかかってうずくまる。

 お尻が冷えて痛くなってきた頃、お母さんがやってきた。

「一通り終わったから病院へ行きましょう。その状態なら点滴を打ってもらった方がいいわ」

 さっき吐いたばかりなので喉が焼けるように痛いし、喋るのも億劫で力なく頷いた。

 化粧はおろかろくに手入れができていない顔はマスクで隠して、スウェットワンピースという着の身着のままタクシーに乗って病院へと向かった。
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