婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 病院に着くと車椅子を借りたお母さんが私を乗せて後ろから押す。産婦人科は相変わらず混んでいて、順番になるまでかなり時間がかかりそう。

 お母さんが、ベッドで待たせてもらえるように看護師さんと話をつけてくれたので、検査のための尿を取った後は中で横になって待たせてもらえた。

 丸椅子に座って様子を見守っているお母さんに申し訳ないと思いつつ、吐き気で眠れない日々を送っている私に襲ってくる睡魔に勝てずうつらうつらしていると、やっとのことで診察室に呼ばれる。先日診てもらった先生とは違う若い女の先生だった。

「ケトン体がかなり出ているので、すぐに入院した方がいいです」

「入院ですか?」

 驚きでつい声が大きくなる。

「毎日点滴に通ってもらってもいいですが、点滴を落とすのに五時間くらいかかりますよ。それくらいの量を打たないと今の状態は改善されません」

 五時間かかる点滴って、いったいどれくらいの量なの。

 ひとりじゃまともに歩けないのに、毎日通院だなんて現実的に考えて無理だ。
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