婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「水分や食事がとれない状態が続くと、脱水症状と飢餓状態が起こって、体内の糖を使い果たしてしまうのです。そうなると、今度は脂肪を分解して糖を作りだそうとするのですが、これがケトン体というものが出る理由です」

 先生は知識がない私に丁寧に一から説明してくださる。おかげで自分がいかに危険な状態なのかを理解できた。

「つわりは病気ではないですけど、妊娠悪阻(にんしんおそ)は病気ですからね」

 隣に座るお母さんを見ると「入院しましょう」と、強い口調で促された。頷き返し、先生にもお願いする。

 そこからはあっという間だった。

 部屋の準備が整うまで処置室で点滴を打たれ、お母さんは先生や看護師さんと入院の手続きを行ってから、私の着替えなどを取りに一度マンションへと戻った。

 点滴には吐き気止めも入っているらしいのだが、気持ち悪さは一向に変わらない。水分が体内に入ったからか急に尿意を感じ、ナースコールで看護師さんを呼んでベッドから起き上がらせてもらう。

 その瞬間猛烈な吐き気に襲われて、その場で吐いてしまった。

 点滴を打ったらすぐに楽になるってわけでもないのね……。

 絶望感を味わいながら用を足すと、部屋の準備が整ったので移動するようにと看護師さんから指示を受けた。
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