婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
 通された個室にはシャワー室とトイレ、それに冷蔵庫やテレビなどもあり、部屋から出なくても生活できるようになっている。

 ひとまずここで先生たちに任せていれば、自分の身体や赤ちゃんの心配をしなくて済むのだと安堵してホッと一息つく。

 新さんに連絡しなくちゃ。

 そう思ったのだが、携帯電話が入ったバッグはソファの上に置いてあり、取り出すためにはベッドから下りて歩かなければいけない。

 動いたらまたさっきみたいに吐いちゃうかも。

 普段なら数秒でやってのける動作も今は命懸けだ。

 しばらく思い悩んだが、どうしても起き上がる勇気が出ず、お母さんが戻ってきてから連絡をすることにした。

 ひとまず二、三日の間は、五百ミリリットルの点滴一パックを一日に四パック注入するそうだ。だいたい一パックが一時間半で終わるので、その度に機械がピーピーという音を立ててけたたましく鳴る。

 ゆっくり寝てもいられないわね……。
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