婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「こんなに可愛らしいお嬢さんが、これからは私たちの娘になるなんてとっても嬉しいわ」

 新さんのご両親は言葉通り本当に嬉しそうに顔をほころばせて、私に微笑みかけた。

 彼等は私にとてもよくしてくれて優しいし好きだ。けれど何度も言うようだが結婚する意志はない。

「あの、新さん」

「どうした茉莉子」

 どうした、じゃないでしょ!

 叫び出したい気持ちを抑えて膝の上で拳をきつく握る。

「ご両親の前で恥ずかしい話をしてしまったかな」

 すらすらと流れるように嘘を吐く新さんが信じられない。

 どういうつもりでいるのかまったく理解できないけれど、本気で結婚の話を進めようとしている。

「後で、ちょっといいですか」

「かまわないよ」

 にっこりとされて沸々と怒りが湧いてきた。

 涼しい顔しちゃって……絶対に許さないんだから。
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