婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「元気な男の子です」

 すぐ横に立つ看護師さんの声を聞いて、赤ちゃんはどこにいるのかと視線をさまよわせる。

 すると足元の方から赤ちゃんを連れてきて、「お母さんですよ~」と言いながら赤ちゃんと私の頬を触れ合わせた。

 我が子を抱くことすら叶わないけれど、頬から赤ちゃんの温もりと柔らかな感触を受け取って、胸に熱いものが込み上げる。

「やっと会えたね」

 話しかけた直後、涙腺が崩壊して涙が次から次へと溢れ出る。

 なんてかわいいのだろう。

 小さな身体で一生懸命に声を上げている姿が愛おしい。

 それから赤ちゃんは新さんたちに会うため私のもとを去っていった。安心して気が抜けたのか、看護師さんに涙を拭いてもらったのを最後に私は意識を手放した。

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