婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「五年前に話し合った通り、茉莉子との婚約を解消したところですぐに別の縁談がくるだろう。しかも俺はもう二十九だ。両親も悠長にかまえてなんていられないのは目に見えている」

「恋人や好きな人はいないのですか?」

 新さんほどのイケメンエリートであれば、さぞがしモテるはず。

 だから女性のひとりやふたりいるのがあたり前だと思って聞いたのに、気に障ったのか不機嫌な目つきで睨まれた。

「茉莉子はいるのか?」

「いませんけど……」

「俺もいない」

 そうなんだ。仕事が忙しくて恋愛どころではなかったのか、今はたまたまいないだけだろうけれど。

「まだ顔を見てもいない得体の知れない女と結婚するよりも、五年間付き合いのあった茉莉子と結婚した方がいいだろう」

 驚いた。私を嫌っていると思っていたのに。

「ものすごくタイプの女性と出会えるかもしれないじゃないですか」

「タイプの話をするなら、茉莉子は俺の好みだけど」

 真っ直ぐな瞳は、からかっているようには感じられない。

 本気で言っているの?
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