婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「……傷ができても、変わらず触れてもらえますか?」

 情けない声で聞くと、新さんはとても真面目な顔つきで、ゆっくりと私に言い聞かせるように話をする。

「一分一秒でも長く触れたいという気持ちは一生変わらない。この先茉莉子が嫌だと言っても断る」

 私を安心させるためだと思うが、胸にじんと響く言葉をもらえて心が軽くなった。

「その言葉が嘘にならないように、私も頑張らないといけないですね」

「茉莉子はいつだって頑張ってばかりだ。いい加減、甘やかさせてくれないか」

「十分、甘やかされています」

「それを本気で言っているなら問題ありだな」

「そんな大袈裟な」

 苦笑交じりに言っても、新さんの目は厳しいまま。

 困ったな。どうすれば納得してもらえるのだろう。

 断続的にやってくる睡魔と闘いながら、うまく働かない頭で必死に考えを巡らせる。
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