婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
エピローグ
子供の名前はふたりで考えて、幸真と名付けた。
〝幸〟という字には海の幸のように宝のイメージがあり、〝真〟という字には真ん中や、まこと、という意味がある。みんなにとってまことの宝であり、いつも幸せの真ん中にいてほしいという願いを込めた。
「新さんの名前には、どういう意味が込められているのですか?」
今更だけど聞いていなかったな、と気づく。
幸真を立ちながら抱っこしている新さんが、ソファに座っている私を振り返った。
生後二か月を迎えた幸真の身体的発達は成長曲線の上の辺りで、健やかに育っている。
「どんどん新しいことにチャレンジしてほしい、だそうだ」
「新さんにピッタリの名前ですね」
「そうか? 茉莉子は?」
「ジャスミンの漢字である茉莉を使ったのは、かわいらしく、花のように、人を惹きつける子になってほしいという想いからだそうです」
「そっちこそピッタリの名前じゃないか」
「そうでしょうか」
「少なくとも俺は引き寄せられたよ」
ふっと柔らかく笑った新さんがカッコよくて胸が小さく高鳴った。
寒く厳しい冬が終わってうららかな春に移り変わり、私たちが夫婦になってから一年が経とうとしている。