婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「なんでもないです」

 オムツを交換して手を洗った後、幸真をベビーベッドに寝かせてから私の隣に腰を下ろす。

 これはまずい。問い詰められる。

 予想通り訝しげな眼差しを送られたので、ぎこちなく笑って「幸真おりこうさんですね」とあたり障りのないことを言う。

「なんだよ」

 でも、新さんは逃がしてはくれない。

「えーっと……」

「どうせ嘘がつけないんだから、さっさと言ったらどうだ」

 その通りなので反論ができない。

 はあ、と深い溜め息をついて、気乗りしないまま正直に打ち明けた。

「もうすぐ結婚記念日じゃないですか。だから日頃の感謝を込めて、新さんに贈りものがしたいと思ったんです」

「そんな気は回さなくていい」

 そう言うだろうと分かっていたからこっそり考えていたのに。

「私だって、たまには尽くしたいんですよ」

 うまくいかないなぁ。探りの入れ方だったり、いろいろと下手くそなのよね。

 サプライが叶わなくなってしょんぼりと肩を落とす。
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